こんにちは。DTMで日々作曲をしている、作曲家・サウンドクリエイターのGTMです。
今回の記事は、オーケストレーションの勉強方法と、おすすめの本について、書きます。
オーケストレーションについての知識があれば、DTMで作曲する作品の、完成度を高めることができます。
「オーケストレーションを学んでみたいけど、独学でどう勉強したらよいか」、悩んでいる方のお役に立てるように書きます。オーケストレーションの勉強法に関する考え方のコツを、なるべくわかりやすくお伝えします。
ちなみに筆者は、4歳から音楽大学附属音楽教室で音楽の勉強を始め、音楽大学作曲科を卒業し、音大大学院作曲専攻を修了しています。音楽を教えた経験もあり、ずっと作曲を続けています。その経験をもとに、この記事を書きます。
はじめに
なぜ、オーケストレーションのための勉強が重要なのか
- どんなジャンルを作曲するにしても、アレンジするのに、ストリングスの音が使えると役に立つ
- オーケストラの楽器は、現実に存在する、リアルな楽器。楽器の特徴や特性を知って、「その楽器らしい自然な音の流れ」を作れるようになると、曲全体の質が上がる
- DTMで打ち込むにしても、オーケストラの特徴を知って、アレンジすることで、曲全体のサウンドに安定感を持たせたり、音楽に説得力を持たせたりすることができる
つまり、リアルな楽器なので、それぞれの楽器に、得意なことと、得意でないことがあります。鳴らせる音域が、それぞれ決まっています。それを知って作る方が、音楽の流れが生き生きし、エネルギーある音楽になります。
オーケストレーションの勉強方法
筆者が考える、オーケストレーションの勉強方法は、大きく分けて次の3つです。
- 管弦楽法の本を読む→各楽器の知識、楽器の組み合わせ方を知る
- スコアを見ながら曲を聞く
- 和声法、対位法を勉強する
それぞれについて、詳しく書いていきます。
管弦楽法の本を読む→各楽器の知識、楽器の組み合わせ方を知る
「管弦楽法」について書かれた本が、複数あります。自分に合いそうな本を選んで買うと良いです。そして、じっくり丁寧に、何度も読みます。
- 各楽器の性能や、特性を知る
- 各楽器の音を心に思い浮かべられるようにする
- 楽器を組み合わせた時の効果について知る
管弦楽法の本を読むときは、上に挙げた3つのポイントを意識すると、学ぶ効率が良いです。
一項目つずつ、詳しく書いていきます。
➀各楽器の性能や、特性を知る
各楽器には、楽器の作りによって、演奏しやすいフレーズと、演奏しづらい、または演奏できないフレーズがあります。
例えば、木管楽器には、演奏できないトリルの音があります。
例えば、ホルンは、細かく速いフレーズは演奏しづらいです。
このように、オーケストラのそれぞれの楽器について、できること、できないことを知っていく必要があります。
1つの楽器でも、音域によって、音色の雰囲気が変わります。
例えば、ヴァイオリンは4弦ありますが、それぞれの弦ごとに、音色の特徴が違います。
例えば、クラリネットは、低音域は独特の音色、中音域は響きが十分でない音を含む、高音域は明るくよく響く、という特徴があります。
楽器の性能や特徴を、管弦楽法の本から、じっくり丁寧に読み取り、覚えていきます。
②各楽器の音を心に思い浮かべられるようにする
管弦楽法の本には、楽器の音の特徴、音域ごとの音色の雰囲気が、言葉で書かれています。それを丁寧に読みます。
実際に音を聞いて確かめると、さらにわかりやすいです。
クラシック曲の、編成の小さい曲や、ソロの演奏の音源を聞くと、それぞれの楽器の音色を、確かめやすいです。
それぞれの楽器の音色を聞く、という経験を積み重ねると、自然と、頭の中で楽器の音を思い浮かべて鳴らすことができるようになります。
楽器の音が思い浮かべられるようになると、作曲はイメージ力が重要なので、格段に作曲の能力がアップします。
③楽器を組み合わせた時の効果について知る
楽器の組み合わせについても、どの組み合わせにすると、どんな効果が出せるのか、ということが、管弦楽法の本に書かれているので、音をイメージしながら読みます。
例えば、弦楽器と、ホルンの音色はよくとけあうなど。
オーケストラの楽器で作曲するには、なんとなくの雰囲気で作るのではなく、楽器の特徴を踏まえて、「テクニカルに構成していくイメージ」を持つことがポイントです。
管弦楽法のおすすめ本の紹介
筆者がおすすめする管弦楽法の本は、次の2冊です。
- 『管弦楽法』ウォルター・ピストン著
- 『管弦楽法』伊福部昭著
この2冊は、楽器についての情報がとても詳しく書かれています。また、たくさんのクラシック曲を分析した上で書かれている本なので、なぜそう言えるのかという根拠がはっきりしており、わかりやすいです。
何度も丁寧に読みこんでいくことで、着実にオーケストレーションの知識を学ぶことができます。
この2冊は、価値の高い、深みのある、内容が詰まった本です。少し古い本ですが、オーケストラの楽器自体は、書かれた時からほぼ変化していないので、現在でも十分に役立つ知識です。
手軽に見えてすぐに役立ちそうな、内容が薄い本を読むより、この2冊を読むほうが、はるかに効率よく学べると思います。
スコアを見ながら曲を聞く
クラシック音楽のスコアを見ながら、音源を聞くということを、繰り返します。
スコアというのは、パート譜ではなく、オーケストラのすべてのパートが書かれた楽譜です。つまり、指揮者が見ている楽譜です。
楽譜に慣れていない方は、モーツァルトの交響曲あたりから、スコアを見ていくと良いと思います。
モーツァルトの曲は、オーケストラのそれぞれの楽器の書法が、自然でとても効果の高いものとなっているので、最初に聞くのにおすすめしたいです。
あたりまえですが、作曲家によって、オーケストラの書き方に個性があり、それぞれの作曲家に特徴があります。
- 一つの楽器に注目して聴く
一つの楽器に注目して聴くことで、その楽器の音色の特徴や、特有の奏法がわかり、どんなフレーズだと聞き映えするのかがわかってくる。
- 音の重ね方に注目して聴く
例えば、ストリングスの上にフルートが重なったらどう聞こえるのか。
例えば、クラリネットとフルートが重なったらどう聞こえるのか。
和音で重ねるのか、同じメロディーを重ねるのか、ということにも注目して聴きます。
つまり、管弦楽法の本で読んだ知識を、実際に耳で確かめれば、だんだん、楽器の音が、自分の体にしみこんできます。
おすすめのスコア紹介
全音楽譜出版社さんの楽譜は、値段も安く、手に入りやすいのでおすすめです。曲の細かい解説が書かれているところも、おすすめしたいポイントです。ポケットスコアとよばれるもので、小さくて手に取りやすいサイズで、便利です。(指揮者が実際に指揮台で使うスコアは、かなりサイズが大きく値段も高いです)
モーツァルトの「交響曲第41番ジュピター」は高校の音楽の教科書にも登場する名曲です。CDも、図書館で借りれば、無料で勉強できます。
この曲にこだわらず、ご自分の好きな曲を、どんどん勉強していくと良いと思います。
音だけだと聞き流してしまう部分も、スコアを見て、目で確かめていくことで、楽器の使い方を細かく観察することができます。
レコードやCDの方が音質が良いので、レコードやCDの音源を聞いて勉強することをおすすめしますが、手早く曲を知るために、Youtubeを利用するのも便利です。参考までに貼っておきます。
和声と対位法を勉強する
和声とは、和音の連結に関する理論。つまり、コードを連結させる方法論です。
対位法とは、和声と対照するもので、音の流れの、横の線のための理論です。
つまり、ざっくり言うと、和声はタテの書き方(厳密に言うとヨコも重要)、対位法はヨコの書き方(厳密に言うとタテも重要)です。
作曲にオーケストラを使うには、和声と対位法の知識があると、圧倒的に有利です。
ただし、和声も対位法も、すぐにはできるようになりません。楽器の練習や、筋トレなどと同じように、根気よくトレーニングを続けて、身につけていくものです。
音楽大学の作曲科に入学するためには、専攻の試験として、和声と作曲実技の試験があります。つまり、音楽大学では、作曲を学び始める上で、和声の勉強は、欠かせないものとされています。
筆者は、高校1年のときに、作曲の師匠に、和声を習い始め、3年間みっちり勉強したうえで大学に入学しました。
和声と対位法は、独学は、厳しいかもしれません。
なぜなら、本に載っている課題を解いていくのが、基本の勉強方法になります。そこで、独学だと、課題に対しての自分の答えが、良いのか、良くないのか、自分で判断できないと思います。
ただし、そこまでいかなくとも、「和声と対位法の、考え方だけを知る」、というくらいでも、曲作りにはかなり役立つと思います。独学でも、勉強する価値が、充分にあると思います。
是非興味のある方は、次にご紹介する本を開いてみてください。
和声と対位法のおすすめ本の紹介
勉強する順番は、和声を先に勉強してください。和声をひととおり終えてから、対位法の勉強をする、という順番が、効率良い学び方です。
ご参考までに、和声と対位法の、おすすめ本をご紹介します。
- 『和声 理論と実習』 池内友次郎著 音楽之友社 (全3巻)
- 『和声 理論と実習 別巻 課題の実施』池内友次郎著 音楽之友社
- 『対位法』長谷川良夫著 音楽之友社
- 『対位法』ノエル=ギャロン、マルセル・ビッチュ著 音楽之友社
『和声 理論と実習』は、全部で3巻あります。基本的な和声の規則が、わかりやすく書かれています。説明を読んで、そのあとに書かれている課題を解く、という勉強を、繰り返します。
『和声 理論と実習 別巻 課題の実施』は、上に挙げた、1巻から3巻の中の課題に対する、一つの解答が書かれています。
きれいな解答が書かれていますので、この別巻があれば、独学でも勉強できるのではないかと思います。
「一つの課題を何度も解いて、解き方を覚えるまで繰り返すのが、最善の勉強法だ」と、筆者の作曲の師匠は語っていました。(筆者はそこまで到達できませんでした😹)
だいたいどの音楽大学の音大生も、作曲科以外の音大生も、和声はこの3冊の本で学んでいると思います。
『対位法』(長谷川良夫著)は、筆者が独学した本です。対位法の規則が詳しく説明されており、課題も豊富で、わかりやすかったです。
『対位法』(ノエル=ギャロン、マルセル・ビッチュ著)は、筆者が作曲の師匠にすすめられて、勉強した本です。
和声と対位法に関しては、ここにご紹介した以外の本も、たくさんありますので、音楽専門のお店で、ご自分に合いそうな本を探してみると良いと思います。
本を自分で選ぶと、自分は何が知りたいのだろうかとか、どの本が説明が詳しそうかとか、いろいろ考えるので、本を選ぶだけでも、かなり勉強になると思います。
筆者のオーケストレーションの勉強体験について
筆者は、音楽大学の作曲科と、さらに大学院に入って作曲を勉強しました。しかし、オーケストレーションについては、完全に独学と言って良いと思います。
大学の作曲の師匠はいましたが、オーケストラの書き方自体は習っていません。自分が書いた楽譜に対して、アドバイスをいただくというのが、レッスンであり、それが一般的な作曲のレッスンでした。
筆者が、オーケストラを初めて作ったのは、大学3年の時です。オーケストラの勉強の仕方は、この記事で述べたような方法です。
具体的な勉強方法としては、大学の図書館で、ひたすら管弦楽法の本を探し、いろいろな管弦楽法の本を読み漁りました。そして、これだというスコアを、図書館で借りては、コピーして研究したり、音源を聞きながらスコアを見たり、という勉強をひたすら重ねました。細部の書き方に注意しながらひたすらCDを聞く、ということもたくさんしました。
初めてのオーケストラ作曲は、地道な勉強を積み重ねた後、手探り状態から初めて、何とか約15分間のオーケストラ作品を作りました。
ここでお伝えしたいのは、何事も、自分で課題を作って、自分で勉強の仕方を考え、実現させたいことを実行していく、というのが、何よりも大切なことだということです。そうして初めて、自分の血肉になります。工夫して、失敗を重ねて、やっと得たものは、かけがえのない財産になります。
皆さまには、楽しく、独学することをおすすめしたいです。好きなことをひとつずつ知っていくのは、とても楽しい時間です✨
さいごに
オーケストレーションは、一生学び続け、作曲しながら自分なりの方法を探求し、身につけていくものだと思います。音楽史や作曲家の伝記を勉強すると、どの大作曲家も、一生をかけて、自分のオーケストレーションを磨いているということがわかります。
DTMは、打ち込んだオーケストラ曲を、簡単に鳴らすことができるので、とても楽しいです。ポップス曲でも、アレンジに、ストリングスやブラスを加えると、ぐんと華やかになります。
オーケストラのことを知って、作曲に取り入れ、DTMをもっと楽しんでみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
今回の記事でご紹介した勉強方法を重ねた結果、筆者がDTMで作った曲です。箏とオーケストラを使っています。是非お気軽に、再生ボタンよりご視聴ください。
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