こんにちは。DTMで日々作曲をしている、作曲家・サウンドクリエイターのGTMです。
今回の記事は、「DTMでのストリングスパートの打ち込み方、の第1段階として、弦楽器について知っておくべきこと」についてざっくり書きます。
「作曲でストリングスパートを入れたいけれど、どうしたらよいのかわからない」、というDTMや作曲初心者の方のお役に立てるように、なるべくざっくりわかりやすく書きます。
ちなみに筆者は、音楽大学作曲科や音楽大学大学院で作曲の勉強をし、その後も作曲やDTMを続けています。その経験をもとに、この記事を書きます。
はじめに
ストリングスの打ち込み方を覚えると、曲をぐんと聞き映えするものにできます。
オーケストラ風の曲にアレンジしたいとき、ポップスで華やかさを出したいとき、EDMでクールにかっこよく決めたいときなど、ストリングスは幅広いジャンルで活躍してくれる音色です。ストリングスの音色は、だいたいどんな楽器の音色ともよくとけあい、曲の中で演出したい雰囲気を、一層盛り上げてくれます。
ストリングスをアレンジで使いこなせるようになったら、表現の幅がいっきに広がります。
というわけで、まずはストリングスの打ち込み方を知っておくと、作曲にとても役立ちます。
前回のオーケストレーションの勉強方法についての記事も、あわせてご覧ください。オーケストラのアレンジをするための勉強方法を書いています。
ストリングスパートの打ち込みをするときのポイントを押さえる
- 生楽器なので、楽器の特徴と音の特徴をまずは知る必要がある
- 弦楽器の音をイメージできるように、弦楽器の曲を聞き、音を覚える
どの楽器でも、実際に存在する楽器をアレンジに入れるには、その楽器の構造や特徴を、大まかにでも知っておく必要があります。
DTMはバーチャルな世界なので、めちゃくちゃに打ち込んでも、パッと聞いてそれなりの音楽にはなります。でも、その音楽にもっとエネルギーを持たせて、聴いてくれる人をおっ!と思わせるには、音楽に説得力が必要です。現実に存在する楽器が、不自然に、無理な形で鳴っていたら、その曲で、聴いてくれる人の心をつかむことは、むずかしいと思います。
というわけで、ストリングスについて、ざっくり大まかにでもポイントを知っておくと、まったく知らないで作るより、圧倒的に良い曲を作ることができます。
では、上に挙げた2つのポイントについて、順に詳しく書いていきます。
楽器の特徴と、音の特徴を理解する
- ストリングスパートは弦楽5部でできている
- 楽器の大きさは、小さい順にヴァイオリン ヴィオラ チェロ コントラバス
- 各楽器の音域
- 弦楽器は、大まかに言うと、弓で弾く音と指ではじく(ピチカート)音の2種類がある
- 弾く弦による音色の違い
ざっくりこれらの5つのポイントについて、順に詳しく書いていきます。
➀ストリングスパートは弦楽5部でできている
オーケストラで一般的に使うストリングスパートは、全部で5パートからできています。
5パートの楽器の名前を覚えておくと、DTMで楽器を選ぶときに役立ちます。
覚えるのは4つの名前。
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス
あごに挟んだ構えで弾くのは、ヴァイオリン
あごに挟んで弾くヴァイオリンより一回り大きいのは、ヴィオラ
いすに座って両足に挟んだ構えで弾くのは、チェロ
高い椅子を使ったり、立って弾く巨大なのは、コントラバス
ヴァイオリンは2パートに分かれるので、パートごとに、第1ヴァイオリン(ファーストヴァイオリン)、第2ヴァイオリン(セカンドヴァイオリン)と呼ばれます。パートが違うだけで楽器自体は同じです。
つまり、ストリングスパート=弦楽5部とは、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス です。
DTMでストリングス音源の画像を見ながら、楽器の名前を覚えてしまうと便利です。
②楽器の大きさは、小さい順にヴァイオリン ヴィオラ チェロ コントラバス
楽器の大きさは、小さい順に、ヴァイオリン ヴィオラ チェロ コントラバス となります。
音の高さに関しては、物理的な話を思い浮かべれば、簡単です。弦が短いほど、一定の時間の弦の振動数が増え、音は高くなります。反対に弦が長ければ、音は低くなります。
つまり、楽器が小さいほど、出せる音は高く、楽器が大きいほど、出せる音は低くなります。
楽器本体の大きさは、ヴァイオリンが一番小さく、コントラバスが一番大きいです。
③4つの楽器の、演奏可能な音域を知る
各楽器の演奏可能な音域は、大まかにつかんでおくと役立ちます。
ここでは、手っ取り早く知る方法として、SESSION STRINGS PRO2 の画面を使って、音域を見ていきます。
ヴァイオリン:G2~C6
SESSION STRINGS PRO2の画面では、青く表示された鍵盤が、演奏可能な音域を示しています。
ヴィオラ:C2~C5
チェロ:C1~C4
コントラバス:C0~G2
全楽器とも最低音は、開放弦なのでこれ以上低い音は出せません。しかし、最高音は、実際の楽器であれば、もう少し上の音まで出すことも可能です。この音源では、この最高音までに設定されています。
音域は覚えられなくても問題はないです。というのは、だいたいのストリングス音源では、その楽器が実際に出せる範囲の音しか、鳴らせないようになっています。
とはいえ、アイデアを自由に表現したい場合は、音域を大まかにでも覚えておくと、圧倒的に作曲しやすくなります。
④弦楽器は、大まかに言うと、弓で弾く音と、指ではじく(ピチカート)音の2種類がある
ざっくりと、弓で弾く音、指ではじく音の2種類あると思っておくと、わかりやすいです。
実際に演奏している動画を見るとわかりやすいです。
- ほとんどの場合は弓で弾きます。
- 指で弦をはじく奏法は、ピチカートと呼ばれます。低い弦や低い音の方が倍音を多く含むため、響きが豊かです。ヴァイオリンの高い音でのピチカートもよく使われます。ポンポンと特徴的な響きがします。
⑤弾く弦による音色の違い
それぞれの楽器は、使用する弦によって、微妙に音色の特徴があります。これを頭に入れておくと、曲を表現するために最も効果の高い音を選ぶことができるようになります。つまり、弾く弦の音の特徴をつかんでおくことで、曲の表現力をアップさせることができます。
どの楽器もほぼ同じ特徴があります。
4弦あるうちの、
- 一番高い第1弦は、強く鋭く、輝かしい音、がします。
- 第2弦、第3弦は、柔らかめな音、がします。
- 一番低い第4弦は、大きく力強い音がします。
特に注意するところは、
チェロは、E♭2~F#2あたりの音が、響きがあまり良くないとされています。打ち込むときに、ちょっと気にしてみると良いです。
チェロは、第2弦が、音質が柔らかく美しい音とされています。
コントラバスのピチカートの音は、他のストリングスの楽器より、効果が優れています。物理的に、弦が長いため、ピチカートを演奏すると、倍音を多く含むために豊かな響きになり、音量も大きいです。
⑥ざっくり奏法を知り、その音を思い浮かべられるようにしよう
ストリングスの奏法をざっくりと理解して、その音を頭の中で思い浮かべられるようにしておくと、作曲しやすくなります。
DTMで良く使う、
スタッカート、ピチカート、レガート、トレモロ、ポルタメント、
あたりを覚えておくと良いかと思います。
- スタッカート:音をはっきり切り離して弾く
- ピチカート:弦を指ではじく
- レガート:音を滑らかにつなげて弾く
- トレモロ:弓で細かく反復奏法する
- ポルタメント:音から音への運びを滑らかに弾く
DTMでは、キースイッチで、これらの奏法を切り替えて打ち込んでいきます。
弦楽器には、他にも多くの奏法があります。ご興味が湧いたら、管弦楽法の本で調べてみてください。
管弦楽法の本については、前回の記事をご参考にしてみてください。
DTM初心者の方におすすめしたいストリングス音源は、SESSION STRINGS PRO2
筆者が使ってみた結果、DTM初心者の方におすすめしたいストリングス音源は、SESSION STRINGS PRO2です。
KOMPLETEに含まれている音源です。
SESSION STRINGS PRO2のおすすめポイント
- ストリングス音源の中では、音の立ち上がりが早く、くせのないまっすぐな音で、ポップスやEDMにも使いやすい
- 設定により、音色を選択できるため、ポップスだけでなくクラシック風のオーケストラ曲にも適している
- 幅広いジャンルで使え、キースイッチも充実しており、様々なアーティキュレーションが簡単に打ち込めて、使いやすい
筆者は、特にピチカートの音が、オーケストラの中に入ったときに明瞭に響き、かつリアルな音色に感じるため、気に入っています。
2 弦楽器の音を聞く
実際の演奏を、音源や動画などで視聴すると、弦楽器の勉強が深まります。
クラシック音楽の「弦楽四重奏」というジャンルでは、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなどの偉大な作曲家たちが、多くの曲を作曲しました。
弦楽四重奏は、ヴァイオリン2個、ヴィオラ、チェロの組み合わせで演奏される曲です。
この弦楽四重奏の考え方をそのまま引き延ばしたものが、オーケストラの弦楽5部だと考えると、オーケストラの中でのストリングスパートの役割が、わかってくると思います。弦楽四重奏の楽器にコントラバスを加えれば、オーケストラの弦楽5部になります。
つまり、弦楽四重奏は、作曲を志す人にとって、とても重要な編成です。オーケストラを書く時の、土台となるものです。
筆者も音楽大学の作曲科の学生だった頃、大学2年のときに、弦楽四重奏曲を作曲して、弦楽器専攻の同級生に演奏してもらいました。それが大学の定期試験でした。
弦楽器は弾けないしとにかく何もわからないので、管弦楽法の本を熟読し、様々な作曲家の弦楽四重奏曲のスコアを見て勉強し、音源を聞きあさり、という勉強をひたすらしました。
むずかしくてつらかったけれど苦労して作曲した曲は、演奏してくれた友人たちの表現力に助けられ、ものすごく美しい響きでした。
当時は、ドビュッシーやラヴェルの弦楽四重奏曲にあこがれていました。
弦楽四重奏の曲を実際に聞くと、弦楽器のことが理解しやすくなります。弦楽四重奏を聞くことは、弦楽器を効率よく学ぶための良い方法です。
さいごに
ポップス曲、EDM、オーケストラ、ボカロなど、DTMで制作する音楽の多くのジャンルで、ストリングスが使えるようになると、表現の幅がぐんと広がります。
ポップスやボカロで、高域で明るさや透明感を出したり、デヴィッド・ゲッタみたいに、EDMでかっこいいフレーズを入れたり、映画音楽みたいに、重厚な響きを作ったり。
ストリングスが自由自在に使えるようになると、DTMがさらに楽しくなります。
わからないところは本や動画でどんどん調べて、曲の中でたくさんストリングスを使っていくと、時間はかかるかもしれませんが、自然と自分の表現したいことが具現化できるようになっていくと思います。
オーケストラの楽器を使いこなした作曲ができるようになることは、結構難しいです。しかし、やればやるほど、音楽で表現したいことが実現できるようになって、作曲がさらに楽しめるようになります。是非ストリングスパートを作ることに、チャレンジしてみてください。
オーケストラの勉強方法に関する前回の記事も、お役立てください。
この記事の続き、第2段階として、ストリングスパートの、ヴァイオリンの打ち込み方法についての記事を書きました。以下より、あわせてご覧ください。
最後まで読んでくださり、どうもありがとうございました。
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この記事でご紹介したストリングスも多用しつつ、DTMで作曲した作品です。是非下記ボタンよりお気軽にご視聴いただき、お楽しみください。
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