【ご依頼制作】天つ風の制作について―タイトルにまつわる話―
前回の記事に詳しく書きましたが、≪天つ風≫(和楽器とオーケストラの曲)という作品を制作しました。
戸田光祐さんが執筆された小説「浮世離れ。」のボイスドラマの音楽を、私GTMが担当し、≪天つ風≫というタイトルのテーマ音楽を制作しました。
当記事では、この≪天つ風≫(あまつかぜ)というタイトルが、どのような経緯で誕生したのかについて書きます。
音楽制作時、タイトルに関して考えていること
音楽制作をしている際、タイトルに関して私なりに考えているがあります。
完成した曲にタイトルを付けるときは、ご依頼者様やご購入者様が、持っていて明るくうれしい気持ちになるような名前を付けたいと考えています。私の中に特にタイトルへの強いこだわりはありません。
ただ、お買い求めくださった方に喜んでいただけるような、良いタイトルを考案したいと常々思っています。
タイトルは、曲を制作しながら自然に思い浮かぶときもあれば、いくつもの言葉をノートに書き出して、曲のイメージに合いそうな言葉を拾い出し、辞書や類語辞典を引いて探すこともあります。
天つ風―タイトルの誕生秘話―
今回の制作では、タイトルが自然に出てこなかったため、候補となる言葉をたくさん考えました。しかし、どれも今一つピンときませんでした。
音楽制作に際し、メールでお打ち合わせさせていただいた感じから、ご依頼者様である戸田光祐さんは、日本語の言葉に造詣が深い方だと思いました。そのようなこともあり、戸田さんに気に入っていただけるような良いタイトルがつけられるのだろうかと大変緊張しました。
曲が完成し、データをお渡しする直前の日のことです。夜寝ていた時にふと「天つ風」という言葉が思い浮かびました。忘れてはいけないと、急いでノートに書き留めました。
翌朝、ノートを見返し、考えました。私の中にある言葉が、合成されて出てきた造語だと思いました。しかし、何か気になり、辞書を引きました。すると「天つ風」という言葉が辞書に載っていました。
出典は『古今和歌集』
「天つ風」は、『古今和歌集』に出てくる言葉で、「空を吹く風」という意味です。
「天つ風 雲の通ひ路(ぢ) 吹き閉ぢよ をとめの姿 しばしとどめむ」
という和歌に詠まれています。僧正遍昭(そうじょうへんじょう)が作った、百人一首十二番の和歌です。
この事実を知り、まさに制作した音楽のイメージに、ぴったりの言葉であることに驚きました。
曲はちょうど秋風が吹くところから始まります。物語では、神様や神社が重要なモチーフとなる所とも、イメージがぴったりと重なります。
百人一首は、中学生の頃に国語の授業で全部覚えましたが、その後だいぶ長い間、思い出すことはありませんでした。
不思議なことに、さびついた記憶がタイミングよくふっと出てきた感じです。
偶然のタイミング
≪天つ風≫の制作に関しては、最初から最後まで、なぜか様々なタイミングが、うまくかみ合いました。
制作の直前に尺八・笙・篳篥・鞨鼓・鉦鼓・楽太鼓などの、この作品の制作に重要な役割を担った、和楽器のソフト音源を手に入れることができたり、作曲開始直前にPCでの制作環境が大きく向上したりしました。
制作に入る直前に、神社に参拝しました。この制作が無事に遂行でき(PCやソフト音源が問題なく故障なく働くように)、ご依頼者様にご満足いただけるような、私の中で最高の曲がご提案できるように、という内容を祈願してきました。
私は、神社の神様が、この願いをかなえてくださったのだと思っています。
≪天つ風≫は、振り返れば、いくつもの奇跡のような偶然が重なり合って、生まれた曲です。
戸田光祐さん執筆の小説「浮世離れ。」をお読みいただけます。
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当記事のアイキャッチ画像は戸田光祐様製作