≪天つ風≫(和楽器とオーケストラの曲)を制作しました

目次

天つ風 というタイトルの、和楽器とオーケストラの曲を制作しました

戸田光祐製作 「小説 浮世離れ。」ボイスドラマ
の挿入曲として≪天つ風≫をご採用いただきました。
GTM作曲・音楽制作 天つ風
こちらは音楽のみの動画です。

戸田光祐様 著・製作「小説 浮世離れ。」のボイスドラマの音楽を、私GTMが担当し、≪天つ風≫(あまつかぜ)というタイトルのテーマ音楽を制作しました。

この記事では、≪天つ風≫の制作について、2カ月にわたり音楽制作した、制作過程や背景をご紹介します。

1 .制作の準備

制作は、資料としてご提示いただいた、声優さんが朗読した音源・小説・イメージを、まずはじっくり読み込むところから開始しました。

ご依頼から作曲に着手するまで1カ月ほど時間があったので、「小説 浮世離れ。」のイメージに関する細かい設定や背景などのお話も、戸田さんからメールでいただきました。

自分の予備知識が少ない所もあったため、資料として伝統工芸・日本語について・建築について・日本の神様について・神社についての書籍を読みこみ、作曲時に小説のイメージが臨場感高くイメージできるよう準備しました。

伝統工芸や建築については今まで関心が薄かったため初めて知ることもあり、楽しい勉強になりました。

この準備で、戸田さんが「小説 浮世離れ。」で表現したいことを正確に読み取り、物語の世界観を臨場感高くイメージできるようにしました。

2.作曲の下準備としてアイデアを出す作業

制作期間に入ると、まずイメージを言葉に置き換え、ひたすらノートに書いていく作業から開始しました。

浮かんできたイメージを、単語や文章で書き出し、そこから曲全体の構成を導き出しました。そのようにして、各セクションのイメージ像を作りました。その上で使用する楽器のアイデアも出していきました。

「浮世離れ。」はメッセージ性の強い物語であると感じました。そこで、単なる情景を描写する音楽ではなく、物語全体の世界観を包摂するような、大きな音楽を必要とすると直感しました。

テーマ性のある、物語を象徴するような音楽にしようと決めました。

日本らしいイメージが底流する物語であるため、箏・尺八・笙・篳篥などといった和楽器を中心に使用し、表現しようと決めました。

3.≪天つ風≫の曲の特徴

「爽籟が聞こえる。」という部分の、爽やかな秋風のイメージから曲は始まります。

尺八・笙・シンセサイザーを使い、爽籟(そうらいとは、秋に吹く風のことです)が、心象として聴き手の心に浮かぶよう意図してアレンジしました。

朗読した音源を聴きながら、文章の流れの中での段落と、音楽の構成上のセクションとが、対応するように、秒数を調整して作曲しました。

曲の調性は、和楽器の音色が最大限に生きるように意図して、dmoll(二短調)とemoll(ホ短調)を選びました。二度目にテーマが再現されるところでemoll(ホ短調)に転調し、昂揚感を演出するように作りました。

作曲・アレンジの際は、「浮世離れ。」の世界に没入し、湧き上がる音をひたすら書き連ねていきました。

作曲前に読み込んだ資料からのイメージと、「浮世離れ。」のイメージ。自分の体の中ですべてがとけあって、自然に湧き上がる泉のように音が浮かび上がってきました。それを素直に書いていく感じでした。

4.音色について

筝が主役となり、尺八・笙・篳篥・鞨鼓・鉦鼓・楽太鼓などの和楽器が加わり、そこにフルオーケストラ(木管楽器・金管楽器・弦楽器)・ピアノ・ハープ・シンセサイザーが加わります。

合計で108トラックの大編成の曲になりました。

トラック(楽器)が重なるほど、作曲・アレンジの技術も、ミックス・マスタリングの技術も高度になり、高い完成度で仕上げることは難しくなります。

しかし、「浮世離れ。」の深く大きな世界観を表現するためには、これだけの大編成のトラックが必要でした。

≪天つ風≫の制作中の画面
108トラックで構成する大編成のアレンジになりました。
画面右上は笙(しょう)
右下は楽太鼓(がくだいこ)
サンプリングした大宮氷川神社の土鈴 。
実際の音をサンプリングすると質の高い音になり、
曲中で使うと大変高い効果を出します。

「浮世離れ。」には神社や日本の神様が描かれています。

音楽においてもそれを象徴するよう、大宮氷川神社の授与品で偶然手元にあった土鈴の音をサンプリングし、エフェクトをかけて加工し、曲のアクセントとして使用しました。

神々しいイメージを演出するよう意図しました。

音楽制作をする時に、シンセサイザーではなく、楽器の音源を使う場合は、実際に人間が演奏できるように意識して作曲・アレンジしています。そうすることで、音楽自体がもつ息づかいや躍動感を、生き生きとした状態で聴き手に伝えることができると思っています。

吹奏楽や合唱の指揮をした経験や、楽器の演奏や伴奏をした経験を生かして、実際の呼吸や空間の状態を見ながら、作曲・アレンジしています。

≪天つ風≫は、「浮世離れ。」の物語が内包する深さと力に引き出され、壮大なイメージの音楽になりました。制作の全行程で、「神様に捧げる音楽」をイメージし続けました。

5.ヴォーカル入り版の制作背景

アレンジ・ミックス・マスタリングがすべて完成したところで、声が入ると良いのではないかと、ヴォーカルを入れることを思いつき、急遽ヴォーカルバージョンも作ることにしました。

≪天つ風≫のヴォーカル入り特別バージョン。
「浮世離れ。」ボイスドラマ本編では未使用の
特別オリジナル版。
Vocal:きい

曲の中盤、二度目のテーマが出てくるところから最後にかけて、ヴォーカルが入ります。

「神様に捧げる音楽」を表現するために、生身の人間の声を使うことはきわめて効果的であると考えました。

声には楽器とは異なる、人を魅了する根源的な力があると思っています。

歌声は、ヴィブラートを極力かけない純粋な歌唱方法の、ソプラノのヴォカリーズ(この曲ではアの母音で歌唱すること)を選びました。

きい さん の素直で透明な歌声は、≪天つ風≫の「神さまに捧げるようなイメージ」にふさわしいと思いました。

GTMが曲作りについて思うこと

曲作りは奇跡のようなものです。

当然自分で作っているのですが、同時に自分ではない何者かが道筋を教え導いてくれ、それに従って自然に曲が完成するように感じます。まっさらな心で作品と向き合うと、イメージと音が聴こえてきます。それを素直に書いていきます。

曲作りをしている時は、もともとそこに形として存在するものを、少しずつ彫り出していく作業であるような感じがします。

≪天つ風≫は特にそのような感覚を強く感じました。「浮世離れ。」のテーマと、私の心とが強く共鳴したからかもしれません。

さいごに

戸田さんがGTMの音楽をご使用になったご感想を、ブログ記事に書いてくださいました。

戸田さんがGTMの音楽をご使用になったご感想を、ブログ記事に書いてくださいました。

戸田さんにお褒めいただいて大変うれしいです。私は、「浮世離れ。」という素敵な作品に、作曲家として関わることができたことをとても光栄に思います。

素敵なお声の声優さんの演技と音楽が重なると、音楽の魅力がぐんと輝き、大変感激しました。

戸田さんのブログ記事をこちらから是非ご覧になってみてください。↓↓

おわりに

≪天つ風≫は、制作準備期間が約1カ月、実際に制作した期間が1カ月。合計2カ月間の制作でした。

後半1カ月は日夜制作に取り掛かり、頭の中は「浮世離れ。」の世界と≪天つ風≫の音像で満たされていました。それは私にとって、とても幸福な時間でした。

制作期間中は、いつか映画音楽のような作曲がしてみたい、と思っていた希望が叶った喜びでいっぱいでした。

「浮世離れ。」のテーマは、「せっかく日本に生まれて来たのだから、選べるなら、日本の伝統を生かしながら、今だからこそできる新しい音楽を作りたい」と日頃考えていた私の考えと、ぴたりと重なる内容でした。

私は子どもの頃から現在に至るまで、日本に関する様々なことに興味を持ってきました。

座禅をさせられていたり、日本の歴史が好きだったり、漢字や文字が好きだったり、硬筆が得意だったり、剣道をしたり、将棋を覚えたり、箏を習って弾いたり、和楽器の曲を作曲コンクールに出品して入選し、プロの和楽器演奏家の方々に初演していただいたり、筝を教える仕事をしたり、日本音楽について教える仕事をしたり、神道と仏教に興味を持ったり、など、ふと思い出せば様々に日本の文化を好んできました。

今まで興味を持ってきたこと。

今まで作曲してきた音楽。

音楽で多くの人を幸せにしたいとずっと思い続けてきたこと。

様々な事が奇跡のようにつながって、今回の制作に至ったのだと思うと、とてもありがたい気持ちでいっぱいになりました。

そして、GTMの存在を見つけていただき、このような素晴らしいご依頼をしてくださった戸田光祐さんにとても感謝しています。

過去・現在・未来のすべての時の流れが一本になり、生まれ出た≪天つ風≫。

たった2分弱ですが、私にとってたくさんの奇跡がつまった音楽です。そして私に出せるすべてのエネルギーと希望とを精一杯注ぎ制作しました。

小説 浮世離れ。 ボイスドラマ
天つ風 
天つ風 ヴォーカル入り特別バージョン

戸田光祐さん執筆の小説「浮世離れ。」をお読みいただけます。

「浮世離れ。」は見知らぬ異世界での出会いの中で家業と向き合う、ものづくりの物語りです。ボイスドラマと合わせて是非こちらのボタンよりお楽しみください。↓↓

≪天つ風≫の制作については、こちらの2つの記事もあわせてご覧ください。↓↓

当記事のアイキャッチ画像は戸田光祐様製作

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